対岸(Michigan)のブランパン

対岸(Michigan)のブランパン

このブログでは、欠かせる情報をピンポイントすぎる視点で垂れ流しております。

【SHINOLA GOMELSKY(ゴメルスキー) 前編】ミシガンを舞台に躍動する存在たりえるか、ラグの魔術師

 

先日の記事においては、腕時計の明日を憂う腕時計フリークの諸兄姉に対し、冗長にして極めて個人的な意見の垂れ流しを敢行してしまった。そして、事もあろうにここにその上塗りをしようと試みる筆者は紛れもなく陰険、それに加えて愚鈍とすら言えよう。

 

 

 

さて、既に内容の希薄な記事で述べている通り、SHINOLA(シャイノラあるいはシャイノーラ)はアメリカはデトロイト発のブランドである。2011年に創設され、時計に始まり革製品、自転車、今やホテル経営まで手掛ける新進気鋭の若手ブランドといえる存在である。

 

既に米国内では20店舗以上の直営店が展開されている浸透ぶりなわけであるが、写真のこちらはそのうちの1店舗、ミシガン大学のお膝元たるANN ARBOR(アナーバー)Shinola Store - Ann Arborである。

 

 

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ANN ARBOR店舗では、丸形の時計を据えているようだ。

 

基本的には直営店であるのだから、WOODWARDの店舗とさほど品揃えに変化があるわけではないだろう。しかし隙あらば憶測を立てる筆者に言わせれば、たとえ同じブランドであろうとも、展開する街や客層を意識して、それぞれが微妙に方向性が違ってしかるべきなのである。

 

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さすがはミシガン大学というべきか、お洒落に対する意識も高いのかもしれない。構内のリスも被写体慣れしているのか、即座にこのカメラ目線を決めるほどだ。

 

そう、この洒脱な学生街として有名なアナーバーにてSHINOLAが鎮座するならば、元より洒脱なそれが昇華され天にも昇るのではあるまいか、と推論を立てずにはいられないというものだ。

 

 

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洒脱な様相に溶け込むためか、店舗名を過剰に主張することはしないようだ。

 

所見では一度は見逃してしまいそうになったが、やはりそこは気鋭のデザインブランド。陰険かつ鈍感な筆者が見逃してしまわないよう、さりげなく通りの角の時計で主張している。ハイセンスなミシガン大学の学生たちや住人は元より、観光目的で訪れた人をもさりげなく誘う巧みさは、やはり天性の才覚といえようものだろうか。

 

 

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一度中に足を踏み入れたならば、その感性を感じ取る人もあるだろう。

出典:SHINOLA

 

外見は洗練されつつも、それでいて入店を躊躇するほどでもない、その絶妙な塩梅の店構えには快哉を叫びたくなるが、しかしこの店舗はそれだけに留まらない。近年ではさほど珍しくもなくなったとはいえ、こちらの店舗には地下にカフェが併設されているのだ。

ホテル経営まで手を伸ばしているのであるならば、確かにカフェという飲食業を営んでいても不思議ではないかもしれないが、流石は鮮やかな手腕だと訳知り顔で頷きたくなるのは筆者だけであろう。

 

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地下に併設されており、加えて暗めの照明なので日中でも非常にシックな雰囲気である。

出典:The Michigan Daily
 

 

 

さてそんなShinola Store - Ann Arborであるが、今回本題としたいのはこの地下のカフェで$3.5にて頂けるコルタード(※2019年7月現在の価格)ではなく、地上の店舗左奥に展開されているラインナップの一つ、GOMELSKY(ゴメルスキー)である。

 

 

極めて薄い濃度かつ冗長な前置きを自負するこの辺境ブログとしては、若干1300字足らずの前置きのみで本題、もとい個人的な見解の垂れ流しに入るのはやや遺憾ではある。しかしそうせざるを得ないほどにこのGOMELSKY、極めて秀逸な、鋭いデザインセンスを体現しているのではないか、と感じるのである。

 

 

 

 それはそう。

このAnn Arborの店舗に立ち入り、そこにあるとはつゆほども知らずにGOMELSKYのブースに何気なく目をやった瞬間。

その瞬間、陰険なこの筆者に電流と思しき何かが迸ったのだ。筆者の本当の苗字は実は八木なのではないかと、まさしく疑うほどであった。

 

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その名はGOMELSKY。SHINOLAとは別ラインの展開である。

 

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公式HPとは異なるベルトの色合わせとは、なかなかどうしてにくい演出である。

 

 

浅学の徒たる筆者は寡聞にして存じ上げなかったが、SHINOLAが手掛ける別のラインとして、どうやらこのGOMELSKYというラインがあるとのことだ。

筆者に流れる電流、その勢いそのままにスタッフへ尋ねたところによると、基本的には女性向けとのことだが、サイズが極めて絶妙なため、ユニセックスラインとしての位置づけも担えるとの事であった。

 

 

 

それはまさしくその通りだろう。

何故ならこの調和のとれた秀逸なデザインを捉えた瞬間に、隙あらば憶測を立てる陰険なこの筆者は、いくつかの男性向けモデルを想起してしまったのだから。

 

 

 

 

さて。

前回の記事にて、

”現代において、腕時計(特にアナログ時計)のデザインというのはある程度出尽くした感があると思われるので、たとえ最新作であれ、過去のどこどこのデザインに似ている、などという事はブランドを問わず起こりうる現象であるだろう。故に「どこどこのパクりだ」などと逐次やり玉に挙げるのは厄介な議論を呼びかねない。”

などと言っておきながら、その舌の根も乾かぬうちに”いくつかのモデルを想起した”と明言し、あまつさえそれを今から並べ立てつつ述べていくとあっては、あまりに急な手の平返しにたなごころの複雑骨折は避けられまいと覚悟はしているが、しかしここはこのブログが極度の辺境ブログであることを再び最大限活用し、前回にも増して極めて個人的な意見の垂れ流しを敢行していきたい。

 

 

 

 まずは最も目立つコレクションであろう、AUDRY WATCHというシリーズから述べたい。

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いずれも$850。今にして思えば、ストラップとブレスレットで全く同じ価格というのは、ある意味珍しいかもしれない。

出典:GOMELSKY

 

全体的に丸みを帯びた優し気なデザインでありつつ、そのクラシックな顔つきがよく映える、36㎜という絶妙なケースサイズ。それだけでも筆者としては好みになりうる。実をいうと最初の印象としてはケースサイズにも引っ張られてか、VCのグランクラシックを一瞬想起したのだが、しかしよくよく眺めてみればむしろ、特筆すべきはラグの形状ではなかろうか。

つまりは、ケースに対してラグの長さが短いのである。

 

 

ラグが短く仕上げられた時計として想起するならば、ジラール・ペルゴの1966が挙げられるのではないか。

 

筆者が定期的に拝読しているこちらにもある通り、1966のラグは、そのケースサイズに比して短めに仕上げられている。ケースや針の立体感も相まって、極限にシンプルでありながらも個性を感じる。同社の製品、例えばロレアート等に比べると華奢でそれほど目立つモデルではなかろうが、しかし艶のある時計である。

似せたの似せていないのはさておき、形状のバランスとしてこれを想起したというわけだ。

 

ちなみにこのラグ形状、単純にケースからのせり出し量が小さくなるというだけではなく、ベルトとの一体感が生まれるという利点もある。

 

 

 

と言うのも、ストラップベルトを用いる時計のラグは、一般的にはこのような形状である。

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手元に一般的な時計がなかったため、アメリカ代表としてTIMEXさんにお越しいただいた。

出典:TIMEX

 

時計のケース部分に対し、バネ棒(水色点線部分)を使ってベルトを接合している。

ラウンドケースの場合時計の文字盤そのものは曲線であり、対してベルトの端は直線であるため、自然と赤矢印部分のような隙間が形成されてしまう。

 

 

なお一部の時計では、その隙間を少しでも埋めるべく異形バネ棒(弓カン等と呼ぶが)を使用しているものもある。

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左が異形(弓カン仕様)のバネ棒、右が直線型のバネ棒である。正確に言うと右はバネ棒ではないネジ式でむしろこっちが本当の異形なのだが、手元に普通のバネ棒の時計がないので致し方がない。

 

異形といってもただ単に曲げてあるだけではあるが、これだけでも多少間隙が埋まる。ベルトも何となく円形に近づくので、結果として多少なり一体感の醸成に一役買うのである。

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水色が異形バネ棒のイメージである。革ベルトの状態にもよるが、直線のバネ棒よりもわずかに隙間が埋まる。

 

 

 

 

そこへきて、このGOMELSKYはどうであろうか。

 

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見事な一体感である。
出典:GOMELSKY

正面から眺める限り、いずれの間隙も認められない。全体的な丸みを損なわない見事なバランスといえようが、バネ棒を使う場合、留め代として少なくとも革の厚み分は確保しておかなければならない。よっていかにバネ棒を曲げようとも、全く隙間がなくなるというのは本来起こりえないはずである。

 

 

 

これについては、側面から眺めてみるとその構造が何とはなしに伝わってくる。

 

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左は筆者のパトリモニー、右がAUDRY WATCHである。右側の方が、ラグがより本体背面側に突き出る格好になっているのが見て取れる。

出典:GOMELSKY

 

要するにラグがせり出す角度を、文字盤から見て平行方向に振るか、或いは垂直方向に振るかの違いなのであろう。

 

前者を採用した場合、バネ棒を曲げたとしても完全に隙間を埋めることはできないが、ラグを含めた最終的なケースの厚みを抑えることができる。このパトリモニー等の薄いモデルは、その向きでこの方式を採用しているのかもしれない。

 

一方で後者を採用すれば、やや厚みが増すものの振り量によっては隙間をほぼ埋めることができ、正面から見た際の一体感が高まる。ことSHINOLAのモデルとして鑑みた場合、前回の記事で多少触れているがそもそも厚みのあるモデルが多い。よってそのあたりはある程度度外視できるのかもしれない。

 

 

 

さて、ラグについてやたらと電流を走らせてしまったような気もするが、辺境ブログの陰険な筆者が縫い散らかしただけのことである。しかるに些末な問題であろう。

 

 

ともかく、そんなGP社の妖艶な時計にやや似たような、もちろんインデックス等の雰囲気は異なるが、しかしケースサイズ36mmに加えて主張を押さえたラグのバランス。

 

価格は相変わらずやや強気、というよりもどうやらGOMELSKYはSHINOLAよりも更に高めの価格設定であるようだが、そうは言いつつも普及帯の価格(ぎりぎり普及帯と言及しておく)でこのバランス感。知らずのうちに電流が走ってしまうのは、この陰険な筆者だけであろうか。

 

 

 

なおこのGOMELSKY、これ以外にもいくつか電流が迸ってしまうモデルが存在する。

 

とはいえ今回の冗長さはこのブログの平均値をも超えたであろう事から、残り2つのモデルについては次回の記事にて述べることとしたい。

 

Raretsu