対岸(Michigan)のブランパン

対岸(Michigan)のブランパン

このブログには、一部誇張表現や常軌を逸した回りくどさがありますが、自覚はございます。

【SHINOLA GOMELSKY(ゴメルスキー) 後編】ミシガンを背負い立つ角型時計の礎となるか

f:id:Raretsu:20190714101438j:plain

そのつぶらな眼光の先にあるのは、ラウンドか、はたまたレクタンギュラーか。

 

※ 3000文字以上におよぶ冗長にして内容の薄い前置きを、何としても回避されたい方はこちらへ。

 

 

 

先日の記事においては、SHINOLAの別ラインであるGOMELSKYより、ラウンドケースのAUDRY WATCHを取り上げ、ケースがどうのラグがどうのと、いかにも偏屈な筆者らしい視点であれやこらやと並べ立てた。

 

しかしてこのGOMELSKY、一般的なラウンドケースのみならず、四角(レクタンギュラーあるいはスクエア等)のケースもラインナップに含んでいる。そしてまたこのレクタンギュラーのモデルというのが、陰険で通電体質な筆者電流を流した。

このあたりは前回も言及しており、筆者の認識として「SHINOLAは全般的に角型ケースのデザインが得意なのでは」という憶測が(憶測ではないかもしれないが)鎌首をもたげて仕方ない。追加で述べるならば、このGOMELSKYの角型モデルはSHINOLAのそれよりも更に洗練されているのではないかとすら感じるものである。

 

 

 

GOMELSKYの角型ケースに触れる前に、時計において角型のケースというと、高名なモデルというのがいくつか存在する。一部のモデルの中には、そのメーカーのアイコンモデルとなるほど著名なものもある。

 

 

 

代表例としてはとにもかくにも、カルティエタンクシリーズを挙げたい。

1900年初頭に登場し、既に100周年を数えたともいわれる名作中の名作である。

 

 

現行ラインでいうと、タンクルイカルティエタンクアメリカンが存在する。特徴的なインデックスは当時からのものだそうだが、現世においても全く色褪せることなく通用するデザインの妙には脱帽せざるをえない。

 

f:id:Raretsu:20190715003429p:plain

タンクルイカルティエ(SM)

出典:カルティエ

 

f:id:Raretsu:20190715003436p:plain

タンクアメリカン(SM)

出典:カルティエ

 

余談だが最近のモデル、特に男性向けのものでは、このカルティエに秒針やカレンダーを装備したものも多いが、陰険な筆者としてはこのデザインにそれらの味付けは無粋に映らなくもない。いずれも実用性を高める方向付けでもあり、またケースサイズが以前に比べて肥大化している潮流もあり、致し方のないことかもしれないが。

 

 

そんな重箱の隅をつつく見解はさておき、歴史のあるタンクだけあり、これまで多くのシリーズが存在する。

 

 

当時の普及モデルとして、現在でも中古市場で数多くのモデルが流通しているmust de tank(マストタンク)や、往年のデザインを採用した上位ラインのC.P.C.P.(コレクション・プリヴェ・カルティエ・パリ)等も散見する。

その形状も多岐にわたり、もはやスクエアやレクタンギュラーといった範疇にすら収まらないものも数多く展開されていたが、やはり著名な角型の時計として挙げずにはいられまい。

 

 

 

一方でタンクの華やかさに比べるとやや大人しく映るものの、その質実剛健さやよし、と言いたくなるモデルと言えば、ジャガールクルトレベルソであろう。

 

f:id:Raretsu:20190715010557p:plain

レベルソ・クラシック・スモール

出典:ジャガールクルト

 

こちらもブランドのアイコンともいえるほど有名だ。一風変わった横方向の反転機構を備えている事でもまた有名である。今日に至っては完全にデザインとしてのギミックに過ぎないが、一部のモデルは両面に文字盤を備えているのだから驚嘆せざるをえない。

こちらも数多くのモデルが存在し、ケースサイズの展開もかなり幅広い。時代によってケースの呼び名がちょこちょこ変わって若干わかりづらいのは、歴史の長さゆえのご愛敬といえよう。

 

そのほかにも、ジラール・ペルゴのヴィンテージ1945、パテック・フィリップのゴンドーロ、フランク・ミュラーのロングアイランド、最近の物で言うならばフレデリック・コンスタントのカレ等々様々に存在する。

 

 

 

 

しかし。

陰険な筆者が考えるに、角型ケースの時計を選ぶ際に問題になるのが、”ラウンドケースよりも更にシビアなサイズ感”をいかにしてクリアするか、ということではないだろうか。

 

近年においては、ラウンドケースの時計が全体的に大きくなっているという事は既に言及しているが、これはレクタンギュラー・スクエアのケースにも同様の事がいえる。

無論どのサイズが適正か、というのはもちろん装着者によって見解が異なるだろう。が、こと現行のモデルで男性向けを探した場合、ラウンドケース以上にちょうどいいサイズが見づけづらいとすら感じるのである。つまりは縦幅が大きすぎ、時計が腕からはみ出る、ないしはみ出そうになるという現象が顕著に起こる。

 

 

一方で女性向けモデルを選ぼうとすると、それもそれでまた難しい。縦幅は丁度よいが、横幅がかなり細く、ややもすると極めて華奢に見えるイメージのもの。文字盤が多少可憐な装飾になっていたり、ケースにダイヤが象嵌されていて(予算的にもデザイン的にも)躊躇するものなど、サイズ・デザインの両面で意外としっくりくるモデルを探すのが難しい。

 

 

 

他方、古いものを探そうとすると、今度はあまりに小さすぎるのではないか?と感じてしまうものが多いように感じる。

 

ポップアートの旗手として高名なアンディ・ウォーホルが、同時にタンキストであったことは至極有名であり、この写真のように緩めにタンクを装着するのもなかなかである。

f:id:Raretsu:20190715013840j:plain

雰囲気のある人物のつけるタンクというのは、やはり格別といえよう。

出典:江口洋品店・江口時計店

 

とはいうものの、近年のサイズ感に慣れてしまった筆者のような愚昧としては、このサイズは些か以上に小さく感じてしまう。何を隠そう、筆者も一時期は小さなマストタンクを愛用していたが、凡夫たる筆者はある時点で「小さすぎる」と判断を下し、その役割をバスキュラントLMへ移譲させてしまったのである。

 

 

そういった観点を鑑みた時、角型のケースは数あれど、自分に合った適正サイズは意外と多くはない。とみに腕時計の未来を憂う腕時計フリークの諸兄(ここでは諸兄”姉”とはしないでおく)であれば、サイズ展開が時代によって幅広く存在するレベルソシリーズを選択する場合も多くあるだろう。

実際、時計を扱うお店で適正サイズ(ここが辺境ブログであることを念頭に、敢えてこのように表記したい)の角型時計についてアドバイスを求めると、レベルソをおすすめされるケースがままある。そしてその推薦というのはやはりというべきか的を射ており、豊富なサイズやカラー、価格の幅もそれなり以上に存在する。一方で必要以上に尖ったデザインというのが殆ど見られないので、ことビジネスにおける親和性たるやなかなかのものである。

  

 

 

f:id:Raretsu:20190715005933j:plain

PARIS表記はないタンクバスキュラントLM。貴金属ケースではなくSSケースの普及品ではあるが、数が少ないのかLMサイズは探すと意外と見当たらない。

と言いつつ、陰険な筆者バスキュラントLMを愛用している。レベルソのスマートな反転機構は言うまでもなく魅力的だが、このバスキュラントのあからさまに“この時計はですね、なんと文字盤がひっくり返るんですよ”と言わんばかりのこのある種露骨な機構も、存外にこそばゆいと曲解するからである。或いはカルティエのレベルソが手に入れば面白いところだが、あれは流石に入手困難に過ぎる。

 

 

 

 

そんな中で陰険な筆者として考えるに、適正なサイズであり美麗な角型時計として挙げるのならば、ただ一つのモデルを置いて他にない。というのは過言だが、一つ挙げるならVCキャビノチェではなかろうか。

 

f:id:Raretsu:20190723022641j:plain

キャビノチェのYGケース。ケースデザインの上品さが光る一本とは言えまいか。

出典:宝石広場

 

これは1996年のコメモレーションモデルの一つで、名作として有名なあのシャンベランの前年にあたる。

何ともシンプルながら非常に清廉でありつつ、一方でどこか可愛げのあるデザインではないか。さりげないギョーシェもこの時代のVCらしいといえよう。おそらくケース形状はジャルージと同様ではないだろうかと推察するが、縦が31mm、横が26mmとなかなか快い。時代を反映する小ぶりで、適正なサイズの一つだとは言えまいか。

 

ムーブは手巻きでJLCのCAL.822ベースのCAL.1017を搭載しているとのことであり、内部機構の話については腕時計の明日を憂う腕時計フリークの諸兄姉に譲りたく思うが、ともかく巻き味がなかなか小気味よい。バックラッシュ量が多めなのか何なのか凡夫たる筆者にはわかりかねるが、2019年という現代において、敢えて高額な手巻き時計を求める理由はその嗜好性以外には挙げるのが難しく、おそらく感覚的なものだろうと推察する。そういった意味で、巻ごたえの感じられる手巻きモデルは味があって面白いというものではなかろうか。なお、これは別段バスキュラントの陰口を叩いているわけではない。そもそも、この時世において…

 

 

…なおそんなキャビノチェだが、人気があったのか後にヒストリカル レクタンギュラーとしてレギュラーラインに登場していたようだ(現在は廃番)。キャビノチェは限定モデルで本数が限られており、裏蓋に同形のケース等に違いがみられる。

 

 

  

 

さて、前置きだけで3000文字を数える冗長さはさて置くとしても、つまるところ陰険な筆者の考えとして「うまいこと腕に収まる角型で、かつ快いデザイン」という極めて抽象的なラインを突破してくる時計というのは存外に少ない。

少なくとも現行品には殆ど存在せず、多くは既に廃番となった時計たちである。廃番商品となると単純に入手難易度が上がることも多く、その中から良好な状態のもの、そして予算にあったものを選択する必要が出てくる。(無論そのプロセスが愉しいという見方も大いに賛成であるが。“宝探し感”とでも形容しようか。)

 

 

 

そこへきてこの新進気鋭の騎手たるSHINOLAが放つ、このGOMELSKYの角型時計はいかなるものだろうか。

 

f:id:Raretsu:20190723025446p:plain

ケース形状は同じだが、カラーや文字盤に様々なバリエーションがあるようだ。

出典:GOMELSKY

 

写真はGOMELSKYより、SHIRLEY WATCHシリーズ。

非常にシンプルでありながら、収まりのいいケースサイズ(32mm×25mm)である。

どこか脳内にひっかかる既視感があるとすれば、それは先述のキャビノチェではないか…と、こじつけたくなるのがこの陰険な筆者である。

 

 

もともとGOMELSKY自体がSHINOLAにおける『女性向けのラグジュアリーライン』という位置づけだということだから、インデックスのデザインこそやや女性向けな感はあるものの、フォルムそのものはシンプルかつ清潔感が有り、サイズも相まってユニセックスにつけられるモデルといえるのではなかろうか。

言うまでもないが、女性がつける分には何ら問題は無い。サイズ感が気になる御仁もご安心とばかりに、サイズガイドなるものも公式HPに完備している模様だ。

 

 

なおダイヤモンドセッティングのモデルも存在するが、こちらは明確に女性ユーザーを意識したモデルと言っていいだろう。

 

f:id:Raretsu:20190723025955p:plain

ダイヤモンドセッティングモデルは$2,000のようだ。(2019年7月現在)

出典:GOMELSKY

ちなみにSHINOLAライン同様、このGOMELSKYラインも18KPT950といった貴金属ケースの取り扱いはないようである。

 

 

 

 

しかしながらSHINOLA同様、サイズ感やデザインにおいて好感を持てる反面、懸念すべき点というのもまた存在する。

というのも、やはりこのGOMELSKYも母体のSHINOLA同様、恐らく人によっては議論を呼ぶメーカーであるからである。SSケース×クォーツモデルの新興ブランドにして、ラインナップが10万弱からというのはやはり強気であると言わざるを得ない。

 

この時計をファッションウォッチとして捉えた場合、受ける印象としてかなり高額に感じられるだろう。一方で並み居る時計ブランドの時計たちと渡り合うには現状、知名度においてやや力負けしている感は否めない。質感に関しては主観が多分に絡むため明言は避けたいものの、10万円弱の価格帯であればもう少し上を望めるメーカーもあるのでは、と端的な意見を持たずにはいられない。

 

また、価格について気になる点を論うならばもう1点ある。SHINOLAもGOMELSKYも、セールにかかると結構安くなっている点である。公式HPのSALEページを見るに、セールにかかると大体50%オフが相場のようである。それも最近のモデルであっても割と下がるようなので、やけに安くなるという表現の方が妥当かもしれない。そうなると、そもそもこの50%オフの価格が本来の価格なのではないか、と邪推される可能性もあるのでは…とは、あくまで陰険な筆者の憶測であり…

 

 

ともあれ、今後日本市場に本格進出を果たすか否かの展望は伺い知れないが、する場合にはSHINOLA同様、更に価格が上昇することが見込まれる。本国におけるこの価格設定・挙動が吉と出るのか凶と出るのか、デザインに光るものを感じるだけに、今後の展開に一抹の興味を禁じ得ない。

 

  

f:id:Raretsu:20190723024938j:plain

実物のサイズ感というのは写真ではなかなか伝わらない故、実際に手に取れる機会があれば是非ご覧いただきたく思う。

 

 

 

f:id:Raretsu:20190724114545p:plain

SHIRLEYシリーズには変わり文字盤が様々存在する。こちらは何とはなしに、マストタンクを髣髴とさせなくもない。

出典:GOMELSKY

 

f:id:Raretsu:20190724114726p:plain

GOMELSKYの別ライン、AGNES MINI WATCH。こちらはどことなく、既に廃番であるがブランパンのレディーバードの雰囲気を醸しているような気がしなくもない。

出典:GOMELSKY

 

それはそうと、GOMELSKYの文字盤の多くはオパーリンということである。オパーリンで検索すると容易に出てくるここの説明が、ブランパンからゴメルスキーに取って代わる日はくるのであろうか。

 

Raretsu

 

 

 

2019/10/4 追記

 

ゴメルスキーであるが、日本における価格は下記のようになるらしい。

  

予想通りではあるものの、本国価格に比べるとかなり高い。

日本に本格進出すれば変わるのかもしれないが、現状の価格で購入する合理性はあまりないと言えるだろう。